「輝け! CAI!」は、アレルギー疾患療養指導士(CAI)の資格を活かして、全国さまざまな場所でイキイキと活躍するCAIの仲間たちを紹介するコンテンツです。第5回目は、広島県広島市のクリニック「三原皮ふ科アレルギー科」に勤務するCAI第1期生のナース4名による座談会企画です。CAI合格に至るまでの勉強の経緯や資格取得前後の変化などについてお話ししていただきました。
【出席者プロフィール】
- (左) 石本看護師:高校卒業後に看護師となり、整形外科等で勤務。育児休業、施設勤務を経て「三原皮ふ科アレルギー科」開院時(2013年)より現職11年目。
- (右) 小川看護師:30歳で看護師資格取得。整形外科等での勤務後に同クリニックへ入職。現職7年目。
- (左) 清水看護師:島根県の総合病院に勤務後、結婚を機に広島へ。パートでの病院勤務、育児休業後、同クリニック開院時より入職。育休を経て現在に至る。
- (右) 三原看護師:21歳から看護職。総合病院の複数科での勤務経験を経て現職へ。パート勤務11年目。
(五十音順、敬称略)
院長の勧めで全員一緒にCAI取得に挑戦
――皆さんは2021年にCAI資格を取得した第1期生だとのこと。まず、CAI認定試験に挑戦することになったきっかけやご苦労について教えてください。
石本:認定試験が始まる際に、院長から資格取得を勧められました。もちろん強制ではありませんでしたが、「みんなが取れる資格があるよ」と。そこから全員で一緒に勉強を始めました。
三原:仕事をしながらの勉強でしたし、年齢的なこともあり、多くの知識を覚えて確認するのが大変でした。でも、全員が同時に勉強をスタートしたので、勤務の合間などに講義やテキストの内容などをお互いに確認し合うことができました。仲間の存在が大きな励みになりました。
清水:私は何かの勉強をしたいという思いがずっとあったのですが、3人の子どもがまだ小さく育児が大変だということもあり、なんとなく先延ばしにしていました。そんな時に院長に声をかけてもらい、勉強する機会が得られてとてもありがたかったですね。ただ、自由になる時間が朝だけなので、毎朝早起きして集中してコツコツと学習していきました。
石本:私は常勤なので勉強する時間がないと思っていたのですが、院長から「勤務中でも患者さんがいない時は少しテキストを見てもいいよ」と言ってもらい、少しずつ勉強を重ねることができました。
小川:私はなかなか勉強のエンジンがかかりませんでした。家に帰ってテキストを開いてもすぐに睡魔に襲われたりして。そもそも受験勉強というものが久しぶりで、勉強の仕方を忘れてしまっていたので、「どうすれば覚えられるんだろう?」と不安がありました。でも、クリニックでの空き時間を利用して、お互いに「今日はここを覚えるのがノルマよ」と励まし合い、さらに家に帰ってからそこを必ず復習するようにして覚えていきました。
WEBによる受講が時間的な負担を軽減
――皆さん、ある程度ベテランになってから一念発起して受験に臨んだわけですし、仕事も家庭もある中で勉強時間を確保するのは大変だったかと思いますが?
清水:講義がすべてリモートで、家で勉強できたのがとても助かりました。講義のために遠方まで足を運んだり宿泊したりしなくても済むことが、そもそも受験を決めた理由のひとつでもありました。
石本:私は子どもも大きくなっていて手も離れており、そこは他の方よりも楽だったのですが、実は同時並行で他の資格にも挑戦していたので時間のやりくりは大変でした。
三原:家では学習する時間があまりなかったのですが、診療の現場での実地体験を通して勉強したことで頭に入りやすかったような気がします。日頃から「知りたい」という意欲を持っていれば、少ない時間でも学ぶことができるのではないかと思います。
石本:CAI受験には皮膚以外のアレルギー疾患も勉強しなければなりませんが、たとえばお子さんのアトピー性皮膚炎では食物アレルギーなども関係してくるので、皮膚科ではアレルギー全般の知識に触れる機会が少なくありません。そこはラッキーだったと思います。
清水:アトピー性皮膚炎と喘息を持っている方もいますし、そういった患者さんのセルフケアの大変さなど、想像できる範囲が広がったのもCAIの勉強をしたおかげだと思っています。
CAI取得で知識の裏付けと指導への自信が得られた
――CAIの勉強や資格取得を通して得られたものは何ですか?
石本:もともと院長が患者さんへの説明を丁寧にしていたので、私たちもアレルギーについて聞いたことのない病気や言葉はほとんどありませんでした。CAIの勉強を始めて、「院長が説明していたのはこういうことだったんだ」と知識を整理することができました。それまで聞いていたことの裏付けが得られ、「なるほど」と確認できたので勉強はとても楽しかったですね。
小川:私は整形外科が長かったのでアレルギーの知識もあまりなく、院長の患者さんへの説明を聞いて覚えていった感じですが、CAIの勉強を通して少しずつ自信を得ることができました。
清水:自分の知識に自信がないと患者さんに指導をすることもできません。以前はあまり自信がなくて、質問されても「院長と違うことを言ったらどうしよう」と不安でうまく答えることができず、一歩が踏み出せませんでした。でも、CAIの勉強を通してセルフケアの根拠を説明できるようになり、少しずつ指導ができるようになってきたような気がします。
石本:指導方法については、院長が開院当初から私たちに細かくアドバイスしてくれていました。実は私の場合、息子が重度のアトピー性皮膚炎で、自分も蕁麻疹持ちなので患者側の立場もわかります。よく、アトピー性皮膚炎の外用療法では「お薬をたっぷり塗るように」と指導されます。以前は、“たっぷり”がどのくらいの量なのかがわかりませんでしたが、院長の指導で具体的に伝えることができるようになりました。さらにCAIを取得して、セルフケア指導の際に、「こう言ってもらえたら患者さんは安心するだろうな」という一歩寄り添った共感の言葉を挟むこともできるようになったと思います。
三原:アレルギー疾患は治療を継続することが大切ですが、患者さんは一方で薬物治療をやめたいとも思っています。そういった気持ちを尊重しながらも、病状が悪くなったら早く受診してほしいという思いを伝えなければなりません。そのためには、こちら側の聴く姿勢が大事だということも意識するようになりました。
小川:以前は、私自身がアレルギーの病気そのものを正しく理解していなかったので、指導に自信が持てませんでしたし、清水さんがお話ししたように患者さんに質問されてもあやふやな答えしか返せないというジレンマがありました。まだまだ不十分ですが、たとえば薬の塗り方が大切だと根拠を持って伝えることができるようになったので、CAIの勉強をさせてもらったのは本当に良い機会でした。
石本:まず院長の臨床でのアドバイスがあり、さらにCAIの勉強をしたことで理論が後付けされて、自分の知識の隙間が埋まったように感じています。
得た知識は間違いなく患者さんの役に立つ
――最後に、改めてCAI取得を振り返っての感想と、資格取得を模索している後進へのエールをいただけますでしょうか。
石本:私は、自分の知識の確認作業をしながら勉強をする時間がとにかく楽しかったです。とくに、40〜50代になると日々の仕事が忙しく、勉強時間を確保するのも大変ですが、診療現場での日々の仕事を体系的な知識として確認できるので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。
小川:勉強は苦手でしたが、実際に始めると私も「楽しかったな」という記憶しかありません。年齢を重ねると勉強する機会はなくなっていきますが、CAI取得は気持ちを新たにするためにも良いチャンスです。
清水:患者さんへの対応に自信を得られたのがいちばん嬉しかったことです。今後、受験システムがどうなるかはわかりませんが、今ならWEB受講できるので時間のない方にもお勧めです。
三原:私は、患者さんに寄り添うための勉強だと思ってCAIに挑戦しました。スタッフ同士のコミュニケーションも活発になり、同じ方向を見て患者さんと話ができるようになったと感じています。もちろん勉強の苦労は多少ありますが、得た知識は間違いなく患者さんの役に立ちますし、CAI取得は良いことしかありません。
【Message】
三原祥嗣院長
当院での看護師4名のほか、近隣の調剤薬局では薬剤師5名、管理栄養士1名がCAIを取得しており、この10名のCAI取得スタッフを対象にアンケート調査を行ったことがあります。
その中で「CAIを取得して良かったこと」を尋ねたところ、「患者さんへの説明の内容が、勉強することで再確認できた」「自分の知識をアップデートすることができた」「問診や指導について根拠や自信をもって行うことができるようになった」「治療の継続につながるような声かけが少しできるようになった」「スキルアップするチャンスになり楽しかった」といった回答が得られました。
CAI取得は、コメディカルスタッフがそれまでの臨床経験を通して得てきた知識を改めて整理し、さらに自信を持って患者さんと話ができるよう成長するための絶好の機会です。
当院では診察の前に看護師が問診を取っているのですが、CAI取得後は問診の内容が深くなっており、私自身も大いに助かっています。
患者さんへの対応や行っていること自体はそれまでと大きな違いはありませんが、セルフケア指導などの内容が格段に進化かつ深化している印象があります。
クリニックの廊下には、患者さんの理解を進めるためにCAIについての説明を掲示している