
「輝け! CAI!」は、アレルギー疾患療養指導士(CAI)の資格を活かして、全国さまざまな場所でイキイキと活躍するCAIの仲間たちを紹介するコンテンツです。第6回目は、会社として社員のCAI資格取得をバックアップする株式会社メディカルシステムネットワーク(本社:札幌市)の取り組みと、同社に所属するお2人のCAIを紹介します。
【出席者プロフィール】
拔山有貴子さん: 薬局事業本部 地域薬局事業部
(管理栄養士、健康運動指導士、CAI)
菅 裕亮さん:薬局事業本部 学術部、株式会社なの花北海道 なの花薬局若草店 兼務
(薬剤師、医薬品情報専門薬剤師、CAI)
久原 幸さん :薬局事業本部 学術部
(薬剤師、医療薬学専門薬剤師、薬局事業本部 学術部長)
今回は、CAI認定機構 理事長の勝沼先生も直接お話しを伺いに、札幌本社を訪問しました。
目次
18名のCAI有資格者が活躍中
株式会社メディカルシステムネットワークは、医薬品流通・薬局・システム開発の3つの事業が集結して1999年に創業した。
現在、地域薬局事業と医薬品ネットワーク事業を中核として、医薬品製造販売事業、医薬品物流事業、デジタルシフト事業、賃貸・設備関連事業、給食事業、訪問看護事業など幅広い事業をグループで手がけている。
地域薬局事業では地域密着型薬局の「なの花薬局」を中心に全国エリアで467軒(薬局455店舗、ドラッグストア8店舗、ケアプランセンター1ヶ所、訪問看護ステーション3ヶ所)を展開する。同社グループに所属するメディカルスタッフは薬剤師約1,400名、管理栄養士49名、訪問看護師41名(2024年12月現在)。このうち、薬剤師17名、管理栄養士1名の18名がCAI資格を取得しており、本社や薬局店舗ならびに社外で活動している。
教育サポート制度・医療連携プロジェクトでCAI取得・活動を支援
同社には、必須教育・マネジメント教育に加えて選択型薬剤師教育という独自の教育サポートシステムがある。専門性の高い外部資格取得へのチャレンジと、その専門性の発揮を支援する「CP(Community Pharmacist)step・サポート制度」だ。対象資格は30種類以上と豊富で、支援を受けながら臨床・教育・研究の専門性を高めることができる。2024年から対象資格にCAIが加わった。
CP step制度は臨床・研修・研究・資格の4項目の実績を積み重ねて、ステップアップできる制度になっており、CP step 1〜5の5段階に分類されている。多くの薬剤師がスタンダード・ラインであるstep 3以上を目指す。
同社薬局事業本部 学術部長の久原 幸さんは次のように話す。
久原:CP step 5は、学会発表や論文執筆、多数の症例報告が求められる専門薬剤師資格が主となり、CAI有資格者はstep 4に該当します。薬局薬剤師が取得できる資格は限られていますが、CAIは受験要件のハードルが比較的低く、アレルギー罹患率や多様な診療科を考慮すると、CAIの知識が活かされる機会が多く存在します。専門性の向上を目指すとともに、薬局薬剤師全員の基本的な知識とスキルとして、より多くの人にチャレンジしてほしいと願っています。全国どこでも誰でも良質なアレルギー医療を受けられるために、地域薬局薬剤師の果たすべき役割は重要であると考えています。
大学病院と連携してCAI(養成)実践講座を実施
CAIの養成については、前述の薬局教育部が主管する教育プログラムとは別に、2023年より北海道大学病院 呼吸器内科と協働した医療連携プロジェクト「多職種連携による呼吸器疾患診療レベルアッププロジェクト」を開始した。その1つが、「アレルギー疾患療養指導士(CAI)(養成)実践講座」である。本講座は、日本アレルギー学会の専門医を講師とし、「アレルギー療養指導士認定試験ガイドブック」に添った講義を全国各地でWebにて受講することができる。2023年度の1期生は、16名がCAI認定試験を受験し、全員合格に至った。第2期は、資格の取得にとどまらず、資格取得の知識・スキルを、実際の現場に還元しよう!ということを目的に、養成講座から実践講座と名称を変更し、有資格者8名を含む25名でスタートした。日常業務から浮上する疑問に対する専門医からのアドバイス、症例報告の添削や相談、CAIの活動紹介など、有資格者と資格取得をめざす者が屋根瓦方式でともに学び、共有することで全体のレベルアップを図る。また、事務局からは認定試験スケジュールの情報提供、症例報告の書き方のアドバイスなどもサポートしている。
同社ではいま、専門・認定資格取得とともに、専門学会での発表にも力を入れており、複数の優秀演題賞を得ている。
2024年11月に開催された第1回CAIカンファレンス(主催:日本アレルギー疾患療養指導士認定機構)では全11演題中2演題が「なの花薬局」のCAIからの発表だった。
近い将来、CAIによる演題は、さらに多数見られることになるだろう。
こうした同社の意欲的な取り組みが、CAIの裾野を広げる起爆剤になるものと大いに期待される。
薬局や地域などにも広がるCAI活躍の場
――CAIを目指すことになったきっかけ・経緯について教えてください。
菅:私がCAI試験を受けたのは、まだ会社として資格取得の支援を始める前で、自らチャレンジしたいと考えました。もともとアレルギー疾患に興味があり、自分自身もかつて卵アレルギーで苦労した経験もあって、いろいろな勉強会に出ているなかでCAIのことを知りました。薬剤師としてのキャリアは、大学を卒業して当社に入社して今年で10年目になります。現在は、本部学術部となの花薬局の店舗を兼務しています。
拔山:私が管理栄養士としてCAIに興味を持ったのは、ある研修がきっかけでした。その際、先輩の看護師さんに相談したところ、CAI資格の特徴について詳しく教えていただきました。
薬局の管理栄養士は、様々な世代の方と関わる機会が多いため、幅広い年齢層に対応できる資格が重要です。CAI資格の勉強を通じて、アレルギーに使用される薬について学べることも、私の仕事に大きく役立っています。薬歴を参考にする際にも、この知識は非常に有用です。
――現在、CAIを取得した管理栄養士としてどういったお仕事をされているのですか?
拔山:現在、私は本部の地域薬局事業部で働いており、病院と連携している薬局で、食物アレルギー患者さんの栄養相談をしています。北海道の小児アレルギー連携セミナーに参加した際、北海道にはアレルギー患者さんが多いにもかかわらず、診療の均てん化が進んでいないという現状を知りました。
病院の管理栄養士は多くの疾患の栄養指導に追われており、食物アレルギーの栄養指導が十分に行われていない現状がありました。そこで、私から「何かお手伝いできることはありませんか?」と申し出て、薬局で月2回ほど栄養相談を行うことになりました。
実は、私自身、子どもが小さい頃から食物アレルギーや喘息を抱えていた経験があります。多くのお母さんがアレルギーのケアに苦労されていることを肌で感じていたため、自分の経験と知識を現場に還元したいと強く思っていました。現在は、薬局に勤務する管理栄養士と共にアレルギーについて学び、患者さんのサポートをしています。
――なの花薬局には管理栄養士が常駐している店舗がいくつかあるのですか?
拔山:管理栄養士の数がまだ限られているので、1人がエリア内の複数の店舗をラウンドする形で栄養相談を行っています。クリニックと管理栄養士が連携するパターンもあります。
――CAIの管理栄養士として薬局以外での活動もされているのですか?
拔山:2年ほど前から、NTT東日本札幌病院 小児科の医師とともに、アレルギー疾患を持つ子のお母さん同士をつなげるアレルギー談話会を開催しています。先生は函館市立病院でも月1回アレルギー外来を行っていて、そちらでも栄養相談のニーズがあるということで、私も年に3回ほどご一緒させていただいてアレルギー談話会の運営に携わっています。
――地域薬局にCAIの薬剤師がいることの強みは何だと思いますか?
菅:たとえば、アトピー性皮膚炎などの患者さんに塗り薬の塗り方など根拠を示して具体的な指導を行えることだと思います。また、指導方法を他の職員にも伝えるなどアレルギー全般の教育係を担うことで薬局全体のレベルアップが図れます。最近もある職員から、具体的な指導をしたことで患者さんに喜ばれ、「次からもあなたにお願いしたい」とリクエストされたという報告を受け、とても嬉しく思いました。いま、国ではかかりつけ薬剤師の育成を推進しています。アレルギー疾患は患者さんの生活全般に入り込んで指導していかないとなかなか良くなりませんし、全身で起こるのでアレルギー全般を理解する必要があります。アレルギーの患者さんはとてもたくさんいらっしゃるので、アレルギーの専門知識を持った薬剤師がもっと増えて、全員がかかりつけ薬剤師として活躍できればと思います。それがアレルギー診療の均てん化にもつながります。
CAI資格を得ることで多職種のコラボが可能に
――CAI資格を取得して仕事への取り組みなど変化したことはありますか?
菅:服薬指導などに自信が持てるようになりましたし、患者さんにお話をする際のネタとして使いやすい面があります。最初に、「私、アレルギーの資格を持っているので、何でも相談してくださいね」とひとこと言うだけで、患者さんは「自分はアレルギーで皮膚科に通っていますが、花粉症もあるのです」などいろいろとお話ししてくれるので、服薬指導に厚みが出ます。こちらが自信を持って説明すると、患者さんは積極的にセルフケアを実行してくださいます。
拔山:薬局の管理栄養士は薬剤師以外の他職種と連携する機会が比較的少ないのですが、CAIを持っていることが強みとなり、他職種の方々とも円滑にコミュニケーションが取れるようになりました。
例えば、花粉症で果物アレルギーも併発している口腔アレルギー症候群(OAS)の患者さんについて薬剤師から相談を受け、迅速に栄養相談を行うなど、薬局内での連携がスムーズになりました。逆に、アレルギー以外の疾患で薬局に来られた患者さんから「果物が食べられなくて」といった相談を受けた際には、その情報を薬剤師にフィードバックするといったケースもあります。
このように、多職種連携という観点からも、CAIの資格は非常に有効だと実感しています。2024年には北海道栄養士会の研修で、アレルギー専門医とCAIの先輩である看護師さんと3人で、多職種連携についての講演をさせていただく機会もありました。
菅:アレルギー疾患と食べ物の関係については薬剤師も理解していますが、では具体的に何を食べればよいのかまではわかりません。アレルギーの知識を共有した上で、管理栄養士さんに相談することで話がスムーズに進みます。
――他に、CAI資格と多職種連携の可能性についてお聞かせください。
拔山:先日、アレルギー専門医と薬局店舗の薬剤師の方に声をかけて、試験的に勉強会を開催し、医師と薬剤師それぞれの専門職の意見をお聞きしました。同じアレルギー疾患を見ていても、疑問に思う視点は職種によってそれぞれ違うので、多職種の意見を聞けて良かったと好評でした。今後、さらに多くの薬局の薬剤師さんや看護師さんを招いて定期的に開催し、地域全体でアレルギー診療のレベルを底上げできたらと考えています。
菅:病院と地域の管理栄養士さんの連携についてですが、多くは病院で栄養指導が行われますが、患者さんの中にはうまく実践できていないという声があります。病院での栄養指導と薬局の管理栄養士さんの指導内容が食い違っていては意味がありません。そこを薬局の薬剤師がお薬手帳などを活用しながらうまくフォローできればと思います。患者さんにしてみれば食物の制限があってもごはんを美味しく食べたいという希望がありますから、気軽に相談できる管理栄養士さんに調理方法などをアドバイスしてもらうことで患者さんのQOLは上がると思います。
――CAIの先輩として後進へのメッセージをいただきたいと思います。
菅:私がよく後輩たちに話すのは、「アレルギーの知識を得ることで、赤ちゃんから高齢者まで誰でもサポートすることができるようになる」ということです。それに、アレルギーは全身に起こりますので、様々な質問に対応できるようになります。これは医療者としてあるべき姿ですし、自分の自信にもなります。アレルギーを通して全身のことを学んでほしいと思います。
拔山:アレルギー疾患は、患者さんが知識を身につけて、セルフケアをすることで予防も可能ですし、QOLを上げることができる疾患だと思います。CAIの資格を取得することで、セルフケアの指導の幅が広がります。
菅:たしかに、予防にもっと目を向けたいですね。乳幼児のアトピー性皮膚炎などは初期段階で症状を抑えてあげないと、徐々に悪化していってしまいます。そこを止めてあげれば、そのお子さんは生涯救われる可能性があります。そのお手伝いができればいいと思います。
――最後に、CAI資格取得・育成のために効果的な勉強法などがあればアドバイスください。
菅:私は2023年度の試験対策として症例報告書の相談役を担当させてもらいましたが、教えられた側が教える側に回る屋根瓦方式がお互いの成長のためにとても有効だと思います。