2023/8/10

じんま疹

じんま疹のケア

田中 暁生先生

監修者・執筆者田中 暁生先生

広島大学大学院
医系科学研究科 皮膚科学

じんま疹の特徴

 じんま疹は、突然皮膚の一部に痒みのある赤い膨疹(ぼうしん、皮膚の盛り上がり)ができる病気です(図1)。ありふれた皮膚疾患で、症状の程度は様々とは思いますが、多くの人が経験したことがあると思います。この皮膚症状は消え方がとても特徴的で、早ければ数分から数時間、長くても1日くらいで症状があとかたもなく消えてしまいます。症状がひどい時は消えたり出たりを繰り返すため、膨疹がずっと続いているように感じることがあるかもしれませんが、一つ一つの膨疹に注目すると、1日以内に消えていきます。

 

図1

 

 じんま疹は突然起こることが多いので、何か特別な原因があると考えてしまいがちですが、約7割は特定の原因がないにもかかわらず出現します。残りの3割はある特定の原因によって出現します。その原因には食べ物、薬剤、物理的刺激などさまざまなものがあります。このように多くのじん麻疹は原因がはっきりしないのですが、じん麻疹が発生するメカニズムはわかっており、皮膚症状を起こすヒスタミンなどの原因物質を抱え込んでいる肥満細胞や好塩基球と呼ばれる白血球の一種が、様々な刺激によって抱え込んでいる物質を血液中に放出します。その結果、血管が拡張し、血漿成分を血管の外に漏れやすくし、さらにかゆみを感じる知覚神経も刺激して、かゆみやはれを引き起こすのです。

症状

 じんま疹は、突然皮膚の一部が赤くなって盛り上がります(膨疹)が、あまり盛り上がらずに赤いだけの場合もあります(図2)。大きさは2㎜ほどの小さいものもあれば、10㎝以上になるものまでさまざまです。形は円形、楕円形、線状、地図状(図3)などがあり、これらがくっついて、体中を覆ってしてしまうこともあります。通常かゆみを伴うことが多く、そのほかに、チクチクするような痛みや焼けるような痛みを感じることもあります。

 

図2

 

図3

 

 これらの症状は数十分から数時間でおさまるのがほとんどですが、なかには半日から1日ほど続くものもあります。ひどい場合は、膨疹がなくなったと思ってもすぐに新たな症状が現れてしまい、常に皮膚のどこかにじんま疹がある状態になってしまう方もいます。

 じんま疹は腹部や首など皮膚の柔らかいところにできやすいといわれていますが、全身にできる可能性のある病気です。

原因

 じんま疹の原因にはいろいろなものがあり、また、誘因として疲労、睡眠不足、ストレス、発汗などさまざまなものがあります。

 じんま疹の原因と誘因には、次のようなものがあります。

 

・食べ物サバ、エビ、カニ、卵、牛乳、小麦、そばなど

・植物、昆虫イラクサ、ゴム、ハチ、ダニなど

・感染症細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など

・薬剤抗菌薬、解熱鎮痛薬など

・物理的な刺激皮膚の摩擦や圧迫、日光、寒冷、温熱など

・その他発汗、運動、ストレス、疲労、内臓・全身性疾患など

 

じんま疹は原因によって次のように分類されます。また、原因・分類によって、膨疹の形や出現する時間に特徴がみられます。

・急性じんま疹:発症してから6週間以内のもので、特定の誘因がないもの。細菌感染やウイルス感染がきっかけになって起こることがある。毎日出現することが多い。

・慢性じんま疹:発症してから6週間以上経過したもので、夕方から夜間にかけて症状が出やすく、ほぼ毎日出現する。特定の誘因はなく、症状が数カ月から数年続くケースもある。

・物理性じんま疹:皮膚の摩擦、圧迫、寒冷、日光、温熱など物理的刺激が原因で起きる。皮膚の摩擦であれば、擦れたところに一致して膨疹を生じます(図4

図4

 

・コリン性じんま疹:発汗が原因で起きる。運動、入浴、精神的緊張などで発汗が促されたときに発生する。小さい点状の膨疹として出現する(図5

図5

 

・アレルギー性じんま疹:食べ物、植物、薬剤など、アレルギー反応を引き起こす特定の物質(アレルゲン)が原因で発生する。食べ物が原因であれば食べてすぐから2時間程度で膨疹が出現するため、患者さん自身が気づきやすいです。また、アレルギー性の蕁麻疹はアレルゲンに連日暴露されない限りは、連日出現することはありません。

 

応急処置

 ひっかくとさらにかゆみと皮膚の赤みが悪化します。可能な限り擦れる刺激を避け、ガーゼを冷たい水で濡らして絞り、それを患部に当てて冷やすことでかゆみを抑えることができます

 ※寒冷が原因のじんま疹を除く

 じん麻疹が出ているときに血行がよくなると、じんま疹が広がったり、かゆみが強くなったりする恐れがあるので、運動、飲酒、熱いお湯の入浴や長湯などは控えた方が良いです。

検査・診断

 じんま疹かどうかは、皮膚の状態、発症した状況、食べた物、常用薬、経過、既往歴、アレルギーの有無などから判断します。

 何らかのアレルギーが原因だと考えられる場合には、血液検査、皮内テスト(皮内テスト用に作られたアレルゲンを皮内に注射して、皮膚の反応をみる;図6)、負荷試験(アレルゲンとして疑われるものを実際に摂取する)などをしてアレルゲンを特定します。寒冷や日光など物理的刺激が原因と考えられる場合には、その刺激を皮膚に加え、じんま疹が起こるかどうかを確認します。薬剤が原因と考えられる場合には、その薬を少量体内に取り入れ、反応を確認することもあります。

 ただし、これらの検査をしても、原因を必ずしも特定できるわけではありません。特に、蕁麻疹のほとんどを占める急性じんま疹、慢性じんま疹の原因を特定することはできません。

図6 皮内テスト

皮内テスト用に作られたアレルゲンを皮膚に注射して、赤く盛り上がった反応をみます

図7

治療

 まずは、原因となるものを除去することが大切です。かゆみが強い、痛みがある場合には、抗ヒスタミン薬、抗ヒスタミン作用のあるアレルギー薬の内服治療を行います。それでも症状がひかない場合は、抗ヒスタミン薬以外のさまざまな種類の飲み薬を追加します。また、慢性じんま疹に対してはオマリズマブ(ゾレア皮下注)という注射薬を使うこともあります。

予防

 じんま疹の原因となる物質や刺激が特定できている場合、それらを避けることで予防することができます。特定できていない場合には、ストレス、疲労などの誘因を避け、睡眠、休息、栄養をしっかりととり、規則正しい生活を送るように指導します。

監修者・執筆者田中 暁生先生

保有資格

  • 日本皮膚科学会皮膚科専門医・指導医
  • 日本アレルギー学会アレルギー専門医・指導医

現職

広島大学大学院
医系科学研究科 皮膚科学