アナフィラキシーの概要と診断時の注意点

鈴木 亮平先生

監修者・執筆者鈴木 亮平先生

東京慈恵会医科大学附属
第三病院小児科 診療医員

アナフィラキシーとは

アナフィラキシーの定義

アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」をいいます1)。アナフィラキシーは時に死に至ることもあり、早急な治療や厳格な管理が必要ですが、不必要な食事制限や治療は児やその家族の quality of life の低下につながるため、より正確な診断が必要です。

アナフィラキシーの主な原因

(アレルギー疾患療養指導士認定試験ガイドブック146ページ参照)

 

アナフィラキシーの原因は食物が最多であり、次いで薬剤、ハチ毒が続きます2)

アナフィラキシーの症状

(アレルギー疾患療養指導士認定試験ガイドブック149ページ参照)

 

上述の通り、アナフィラキシーとはアレルギー症状が複数臓器にまたがって生じた状態です。

症状を臓器ごと(皮膚・粘膜、呼吸器、消化器、心血管、神経)に分けてお示しします。

 

●皮膚・粘膜:皮膚の紅潮や痒み、浮腫、蕁麻疹、また目の充血や流涙などがあります。

●呼吸器:鼻汁やくしゃみのほか、喉の絞扼感、咳嗽や喘鳴が重要です。

●心血管:動悸のほか血圧低下などがあり、心停止に至ることもあります。

●消化器:腹痛や下痢嘔吐の症状が出現し、しばしば胃腸炎との鑑別が難しいこともあります。

●神経系:ぐったり、不安、頭痛、意識消失を伴うこともあります。

 

アナフィラキシーの対応と治療方法

(アレルギー疾患療養指導士認定試験ガイドブック151ページ参照)

 

まずは呼吸・循環・意識の状態を確認します。次に助けを呼びます。要するに人手の確保です。そして、アドレナリン(ボスミン®を筋注します。病院の外ならば、同じくアドレナリン製剤であるエピペン®を自己筋注します。さらに必要に応じて酸素投与や、静脈路をの確保して補液を行います。その後も血圧や脈拍、呼吸状態などはこまめな確認が必要です。胸骨圧迫等の心肺蘇生が必要なこともあります。

薬剤以外では、適切な体位をとらせることも重要です。血圧低下を確認した場合やショックを疑う症状があれば、仰向けで足を上げます。また呼吸困難時は上体を起こし、嘔吐時は顔を横に向けます。

 

鑑別診断

(アレルギー疾患療養指導士認定試験ガイドブック150ページ表3参照)

 

鑑別が困難な疾患・症状として、喘息急性増悪や失神、不安発作/パニック発作、異物誤飲などが挙げられ、症状出現時の状況や既往歴なども考慮して診断する必要があります。次の章で、私が経験した診断に難渋したケースをご紹介致します。

 

【私が経験した診断困難であったケース3

患者さんは10歳の男子で食物アレルギーの相談で当科外来を受診されました。当科受診の数日前に、りんご1/8個を摂取中にむせ込み、直後に咽頭違和感、呼吸困難を訴え救急病院を受診し、アナフィラキシーの診断下、アドレナリン筋注等の治療を受けました。その後、当科を受診し精査を行いました。

 

患児は今までりんごは摂取可能であり、りんご特異的IgE値やりんごのプリックテストはいずれも陰性でした。オープン法(検者も被験者も負荷食品がわかっている)でりんごの経口負荷試験を実施したところ、生りんご1/8個を摂取した直後から喉の違和感を訴え、その後、喉の絞扼感や咳嗽が出現し、呼吸困難症状が強くなりました。このため、アドレナリン筋注や気管支拡張薬の吸入を行いましたが症状の改善はなく、徐々に顔色不良、上肢の痺れを訴えるようになりました。最終的に、過換気症候群に対する治療によって呼吸困難が軽快しました。このとき、喘鳴やSpO2低下、血圧低下、蕁麻疹などの他覚的所見は認められませんでした。

 

私たちは負荷試験中の呼吸困難の主病態を過換気症候群と判断し、同時に心因反応の可能性も考慮しました。

すなわちアナフィラキシー様症状(呼吸困難)の鑑別を以下のように考えました。

 

1.りんごの食物アレルギーによるアナフィラキシー

2.心因反応

3.両者の重複

食物アレルギーの確定診断では、オープン法での食物経口負荷試験が一般に行われています4。しかし、症状が主観的な症状のみの場合は心因反応との鑑別が困難です。実際、この患児においても負荷試験終了時点ではりんごアレルギーを否定しきれませんでした。

一方、ブラインド(盲検)法による食物負荷試験は心因反応の関与が疑われる場合に有用です。私たちはシングルブラインド(被験者のみ負荷食品がわからない)での生りんご負荷試験(生りんご汁(実薬) VS 抗原性が低い果汁100%りんごジュース(プラセボ))を行いました。結果は、果汁100%りんごジュースにごく軽度の咽頭違和感があり、生りんご汁では症状がありませんでした。そこで陰性と判断しました。

 

患児が呈していたアナフィラキシー様症状は心因反応である可能性が高い(上記の分類では②)と判断し、臨床心理士とともに、生活背景、心理的背景について掘り下げて検討しました。そうしたところ、家族関係、習い事などに対する患児の葛藤や負担感、欲求不満が推測され、カウンセリングを行うことで症状を認めなくなりました。

また、心因反応がりんごによるアナフィラキシー様症状として現れた理由としては、2012年(患児が症状を訴えた前年)に起こった調布市立小学校でのアナフィラキシーによる死亡事故の影響が考えられました。この事故をきっかけに、患児の学校(調布市内)でも食物アレルギー/アナフィラキシーに対する教育・啓発活動が展開されており、患児がアナフィラキシーに対して過敏になっていたことが推察されました。

そして、偶然りんごを食べていた際にむせ込み、その症状がアナフィラキシーではないかという不安から発作様の症状を呈したと考えられます。

 

このように、アナフィラキシーを診断する際には、年齢や状況などから、アナフィラキシー以外の鑑別診断を念頭におく場合があります。

CAIの皆様もアナフィラキシーの診断に苦慮したご経験がございましたら、是非共有させていただけますと嬉しく存じます。

 

引用文献

1) 日本アレルギー学会(監).アナフィラキシーガイドライン.東京:メディカルレビュー社;2014.

2) 今井祥恵,磯崎 淳,山崎真弓,他.10年間に救急受診した全年齢層のアナフィラキシー患者の原因アレルゲンに関する検討.アレルギー・免疫.2016;11:1536-41.

3) 鈴木亮平,前田恵里,勝沼俊雄,他.りんご摂取によりアナフィラキシー様症状を呈した心因反応の1例.日小ア誌 2018;32:230-235.

4) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.食物アレルギー診療ガイドライン2021.協和企画;2021.

 

監修者・執筆者鈴木 亮平先生

保有資格

  • 日本小児科学会認定専門医・指導医
  • 日本アレルギー学会認定専門医

現職

東京慈恵会医科大学附属
第三病院小児科 診療医員