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第2回CAIオンラインカンファレンスレポート - CAI認定機構

第2回CAIオンラインカンファレンスレポート

2022年7月17日、Zoomを使ったオンラインカンファレンスが行われました。今回の内容は、吸入指導とスキンケアです。CAIの濱野理恵さんと君島美雪さんに自分達が取り組んでいる内容、工夫している内容などに関するプレゼンテーションをしていただき、参加者みんなでディスカッションしました。

1演題:「吸入レッスン」を使った成人吸入指導

成人吸入指導について、濱野理恵(日本大学医学部附属板橋病院)さんよりプレゼンテーションがありました。

第2回CAIオンラインカンファレンスレポート吸入レッスン

 濱野さんが勤務される呼吸器内科グループでは、指導を行うCAIや看護師による差がでないよう、Webアプリ(吸入レッスン:www.kyunyu.com)を使ったセルフトレーニングにより吸入指導を行っていることが紹介されました。吸入レッスンは、1) デバイスの選択、2) 製品の選択、3) 動画によるレッスン、4) 復習テストで構成されており、動画を見た後に復習テストを行うことで、習熟度が高められるということです。復習テストはクイズ形式になっていて、吸入手技のポイントとなる知識を再確認できるそうです。2剤以上を使用している患者様に対しては、薬剤の特性に合った吸入のスピードやタイミング、吸入時間がイメージしやすく、より効果的とのことでした。

 吸入指導は、吸入薬による治療効果が不十分な時に依頼されることが多く、繰り返し指導が行われているそうです。吸入指導で注意していることとして、患者の自尊心を傷つけないようなアプローチの重要性を述べておられました。また、吸入指導から6ヵ月を経過すると、吸入レッスンの復習テストの正答率が低下することが分かったため、6ヵ月に1回は吸入方法の確認と再指導を繰り返しているとのことです。

 

第2回CAIオンラインカンファレンスレポート全問正解率の比較

第2回CAIオンラインカンファレンスレポート医師へ報告後処方変更した例

 

現在の課題や問題点として濱野さんは、コロナ禍で、デモ用吸入器の使用が難しくなっていることをあげておられました。しかしそのような状況だからこそ、動画を使った吸入レッスンが役立っていると述べておられました。また、吸入指導は薬局で行われることもあるため、病院・医院と薬局との指導内容の共有と連携が今後重要になると指摘していました。

 

2演題:私たちの取り組み~スキンケアを中心に~

スキンケアについて、君島 美雪(東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科研究補助員/キラリこどもクリニック)さんよりプレゼンテーションがありました。

 

第2回CAIオンラインカンファレンスレポートキラリこどもクリニック君島美雪さん

 

 君島さんは、大学病院勤務中に行った子育て支援看護外来の立ち上げ、クリニック勤務中に行った育児相談などを通して体験した病院でのスキンケアとクリニックでのスキンケアの類似点と相違点を中心に、スキンケア指導の重要性について話してくださいました。

 まず君島さんは、スキンケアのポイントとして、口頭で「しっかり塗って」「たっぷり塗って」などと指導するだけでは、個々の患者さんのイメージに依存してしまうため、正しく伝わらないことがあることを指摘されました。そして、実際の指導で重要な事として、1) 5W1Hによる情報収集、2) 教材による視覚化と体験による技術の共通認識、3) 指導のポイントは3つまで、4) 評価日の設定(予約日)をあげられました。スキンケアの指導を行う際に、コミュニケーション・ツールを上手く使うことが重要なポイントであると述べておられました。

コミュニケーションツールを用いることにより、1) 皮膚の病変部位と使用する外用薬とを一致させることができる、2) 医師やCAIに聞いてみたいこと(例えば「治療はいつまで続ければいいのでしょうか?」)を引き出すことができる、3) 定期評価を行い、成長に合わせた指導と記録を行うことができるなど、その効用を具体的に紹介してくださいました。

第2回CAIオンラインカンファレンスレポート実際の指導方法

君島さんはまた、今後の目標として、アレルギー看護外来の設置、少人数制の勉強会、LINEなどを用いた啓発活動をあげ、医師、メディカルスタッフとの情報共有が重要であると強調されました。

第2回CAIオンラインカンファレンスレポート使用教材

2CAIオンラインカンファレンス_スキンケアにおける質問と回答

なお、当日は発表のあと質疑応答の時間もありましたが、皆様よりたくさんの質問を頂戴しました。
時間内にすべてのご質問への回答ができなかったため、こちらに、頂いた質問への回答を掲載させて頂きます。

質問1. 患者さんのアドヒアランスを向上させる方法・アイデア

回答1.

患者さんへ指導する際にアドヒアランス向上のため私が心がけていることは、①対象となる子どもの発達段階に合わせたプレパレーションとセルフケア、②子どもや養育者のニーズを把握すること、③ポジティブフィードバックです。

①については治療を受ける主体は子どもであり、子どもが治療に対して受動的な立場ではなく、子どもが主体となったケアを行うことができれば、養育者の支援の負担は軽減し、アドヒアランスは向上すると考えています。そのために私が行っていることは、対象となる子どもの年齢、運動発達段階、認知発達段階、心理社会的発達段階を確認し、スキンケア指導を行うにあたり、子どもがケアを受け入れ、子どもの発達を促しながら主体的に行える方法を子どもや養育者の話を伺いながら一緒に考え、提案することです。この時、状況によってはいくつかの方法を提案し、子どもや養育者にどの方法を実践するか決定してもらうこともあります。また、ケアを提案する際には必ず、対象の子どもの発達に合わせたプレパレーションの方法をお伝えしています。

②については、子どもや養育者のニーズの把握とニーズに対するケアの提供です。症状や治療に対する子どもや養育者のニーズを満たすことができれば、ケア継続のモチベーションにつながりやすいと考えています。医療者の治療の優先順位と、子どもやその家族が考える優先順位は、必ずしも一致しないこともあります。そのため、ニーズを必ず把握し、ニーズを満たすための方法やステップを指導しています。

③についてですが、実際の診療場面では、皮膚症状の評価はなされても、ケアを行っている子どもや養育者の努力を評価される機会は少ないように感じています。皮膚症状が改善していても、悪化していても、結果に至るまでの過程は様々ですので、その過程を確認し、できている部分をポジティブフィードバックし、子どもと養育者の自信に繋げてあげることは、アドヒアランス向上につながるケアだと思っています。

質問2. 3つのポイント」とは?

回答2

3つのポイントとは、回答1の①②を含めて、自宅でこれだけはやっておいてほしいケアを3つに絞ってお伝えするということです。スキンケアを指導する過程ではもちろん3つ以上の指導をします。例えば、スキンケアでは、手を使って洗う、良く泡立てた石鹸をつかう、しわを伸ばして洗う、しわの伸ばし方、すすぎ方、軟膏の指導も含めるとかなりたくさんの内容を指導しています。指導した内容すべてを自宅でやっていただくのがベストではありますが、対象者の発達段階や生活背景によっては、指導内容から一部分のみをピックアップして自宅で行う方もいます。そうなると、何をピックアップするかは子どもと養育者に委ねられることになり、結果として、医療者側の意図と乖離してしまうことが起こり得ます。私自身指導していてそのような経験がありました。そのため、たくさんのポイントを最低限の3つに絞り込むようにいたしました。一通りのスキンケア指導をした最後に、必ずやってほしい3つのケアを「まとめ」としてお話ししています。対象者の状況によっては、3つを記載してお渡ししたり、パンフレットにマルや線を書いて「ここだけはやってみてください。」とお伝えしたりすることもあります。

質問3. 他の看護師さんとの情報共有はどうされていますか?

回答3

基本は記録で情報共有しています。記録はSOAPで記載していて、子どもや養育者のニーズとなる言葉は必ずSに書くようにしています。また、通常と書き方が異なりますが、指導した内容と今後の看護プランをどちらもPに記載しています。SOAPで記録を書くことで、私のアセスメントとプランニングも記録で共有できるので、私はこの記録方法を継続しています。記録に書けず、口頭で伝えたいことがあれば、直接他の看護師とコミュニケーションを図ります。

質問4. ご紹介頂いた以外にもアトピー性皮膚炎評価ツールをご存知ですか?

回答4. 

CAIカンファレンスでお伝えしたツール以外で現在使用している評価方法としては、数字がわかる年齢の子に対しては、かゆみをNRSで評価してもらうこともあります。一般的には痛みで使われることが多いと思いますが、NRSは数字で表すスケールなので、主観的なかゆみの評価として使用しています。

私自身はまだ実践はしておりませんが、アトピー性皮膚炎ガイドライン2021に掲載されている、患者による評価法のPOEM質問票やQOL評価法も評価ツールとして使用されています。アトピー性皮膚炎ガイドライン2021をお読みいただき、実践できる評価ツールを検討してみてもよろしいかと思います。

監修者・執筆者庄司 純先生

保有資格

  • 日本アレルギー学会 アレルギー専門医・指導医
  • 日本眼科学会 専門医

現職

庄司眼科医院 院長/
日本大学医学部視覚科学系眼科学分野 臨床教授

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