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2026/5/8

輝けCAI

輝け! CAI! 第7回
日本大学医学部附属板橋病院 アレルギーセンター

写真左から:アレルギーセンター(呼吸器内科)伊藤玲子医師、看護部 月野純子さん、看護部 渡邊 恵さん、看護部 近藤かのこさん、看護部 外来統括師長 佐藤今子さん、看護部 大沢絵美子さん、アレルギーセンター(眼科)庄司 純医師

 

「輝け! CAI!」は、アレルギー疾患療養指導士(CAI)の資格を活かして、全国さまざまな場所でイキイキと活躍するCAIの仲間たちを紹介するコンテンツです。日本大学医学部附属板橋病院(東京都)のアレルギーセンターで活躍する月野さんをはじめとするCAIの看護師グループは弊機構主催の「CAIカンファレンス2025」で最優秀賞(CAI支援賞:活動計画)を受賞しました。今回は受賞演題「動画指導箋のための患者学習用ショート動画作成の取り組み」を中心に紹介します。

9名の看護師がCAI資格者として活躍


日本大学医学部附属板橋病院のアレルギーセンターは各診療科にアレルギー専門外来を置き、各診療科が同日、同時間帯で専門外来を開くことで、患者さんは1回の受診で、必要な診療科が全て受診できるような仕組みで運営されている。同院では9名(外来7名、病棟2名)の看護師がCAIとして活躍しているが、アレルギー担当診療科に配属されているのは月野さん(内科・小児科)、渡邊恵さん(小児科)、近藤かのこさん(呼吸器内科)の3名だ。アレルギー診療にかかわる患者さんへのセルフケア指導は,医師とCAIが連携・分担していきたいと考えている。
月野さんは同院でのキャリア25年を超えるベテラン看護師で、長くアレルギー診療に携わってきた。自身が花粉症で、お子さんもアレルギー体質を持っていることからCAIに興味を持った。仕事においてもとくに小児科でアレルギー児にかかわる中で、もっと本格的に勉強したいと考えてCAI資格の取得に至った。

 

セルフケア指導を3分程度の楽しいショート動画に


月野さんは、セルフケア指導を行う際の重要なポイントを次のように話す。
「アレルギー患者さんに欠かせないセルフケアを習得してもらうには、患者さん自身が必要な日常生活行動を自覚し、自己管理能力を高めることが大切です。それは、看護師の患者指導、日常生活行動の変容、自己管理能力の向上という3つのステップで進めていく必要があります。さらに、個々の患者さんで指導内容や方法は異なるので、CAIによって行われる個別化した患者教育が必要になります。しかし、有効性のエビデンスのある指導のツールが乏しいのが現状です。そんな中で動画を使った患者指導の効果がさまざまな疾患で報告されており、私たちは受動的で効率的な教育ツールとして動画を用いた指導に着目しました」
近年、患者教育用動画が臨床現場で広く活用され始めている。しかし、その多くは20〜30分という長尺のものであり、さまざまな理由で視聴時間を確保できない患者さんも少なくない。また、個々の患者さんに適した動画を選択して視聴させることも難しい。


そこで着目したのが、「3分程度のショート動画を用いた動画処方箋」というオリジナルのコンテンツだった。
「ショート動画は、受動的理解が短時間で可能ですし、一つのテーマを細かく分けて発信することにより、たくさんの情報を提供することができます。アクセスが簡便で場所や時間を選ばず、年齢や性別にとらわれないなど患者さんが負担なく視聴できる動画を作成することを目指しました」(月野さん)
2026年2月現在、すでに完成してアップされているのは「スキンケア」を取り上げた動画だ。「スキンケア1:石けんえらび」「スキンケア2:泡立て」「スキンケア3:洗う」と項目を細分化して要点を簡略化し、1本3分程度の短いコンテンツにまとめてある。このあとも、外用療法や保湿などについての続編が用意されているという。

最初にスキンケアというテーマを取り上げた理由は、アレルギー疾患が経皮感作から始まることが多いという近年の知見も考慮した。さらに、骨髄移植後の患者やステロイドを使っているリウマチ患者、高齢者の皮膚の乾燥などのセルフケアにも幅広く活用できる。
動画は、患者さんが興味を持って視聴できるよう、「Drゲン」と「アレル」というキャラクターを作成し、キャラクター同士の掛け合いでリズミカルな流れを作っている。また、各コンテンツにクイズを導入し、患者さんが自ら考えられる工夫も凝らした。

CAIの大沢さんが心がけたのは、「自分がYouTubeやTikTokなどの動画を見る時と同じように、視聴した人の気を引くような楽しいコンテンツにすること」だったという。
ショート動画を視聴するには、患者さんや保護者に配布する名刺サイズのカードに印刷されたQRコードを読み取ることで、YouTube内の「ITABASHI CAIチャンネル」にアクセスできる。また、一般患者も視聴できるように日本大学医学部附属板橋病院ホームページにもリンクが貼ってある。

 

動画作成を通して学んだ「わかりやすい指導」のあり方


ショート動画の作成企画がスタートしたのは2023年のこと。CAI取得看護師とアレルギー専門医2名による月1回のCAI会議を繰り返した。動画の内容や台本はCAIが一から作成し、医師のアドバイスを得ながらブラッシュアップしていった。
同院には、学会発表用の資料や動画作成を行ったり、オンライン授業を担っている「写真室」というセクションがあり、動画の撮影・編集は写真室スタッフと協働した。動画作成を外部委託する必要がなかったため制作費も最小限で済んだ。動画に登場するキャラクターや小物はコストダウンのためにCAIスタッフが手づくりした。

 


最初はTikTok動画のように簡単に作成できると考えていた。しかし、実際はかなりの時間を要した。原案はもちろん、キャラクターデザインや動画材料などは独自で作成。セリフや人形回しなど、慣れない作業に戸惑うこともあった。しかし、そのプロセスを通して、CAIの渡さんは「言葉の選び方や伝え方など“わかりやすい指導”のあり方を学ぶことができました」と話す。
個々の患者がセルフケアを身につけるためには指導に多くの時間を要する。その入口部分である基本ポイントをショート動画で“予習”してもらうことで、その後の患者個別の指導へスムーズにつなげていくことができる。動画は診察の待ち時間にスマホで視聴することもできるので、待ち時間のストレスが減り、病院滞在時間も短縮される。動画は本格的な指導導入前の意識づけにつながるため、CAIの業務効率化にも役立っている。

 

課題はショート動画による指導箋の効果の検証

現在、通常の診療業務での使用に十分なショート動画ストックの完成を目指している。すでに次回のテーマとして、喘息患者さんのセルフケア動画を取り上げることも決まっている。動画指導箋の活用方法としてイメージしているのは図に示したようなフローだ。

まず、作成した動画は医師の指示を得て、CAIがそれぞれの患者さんに必要な動画を選択し、動画処方箋を発行する。患者さんにあらかじめ動画を視聴してもらい、その上でCAIが個別のセルフケア指導を行う。指導時間がない患者さんには、自宅で視聴できるよう動画指導箋の使い方を説明する。次回の来院時には、CAIが診察前に患者さん自身がセルフケアを実行できているかを確認し、理解が不十分であれば再指導を行う。
また、「指導チェック表」を用いて、医師とCAIの情報共有、患者の症状と病識の把握、アドヒアランスの評価を行う。
次への取り組みとして考えているのは、ショート動画による動画処方箋の効果の検証だ。効果判定用の患者アンケート調査などを実施して、動画処方箋発行前と発行後の病状を比較する。


月野さんは、患者さんの評価に加え、患者さんによるCAIの指導の評価も重要だという。動画作成〜指導のプロセスを通じて、CAIのスキルアップや指導の質の向上、均てん化にもつなげていきたいと話す。
「アレルギーの患者さんにとってセルフケアは継続が大事ですから、負担なく楽しみながら取り組んでもらうことが大切です。そのツールの一つとしてショート動画は有効ではないかと思います。指導の基盤としての動画があることで、CAI取得看護師だけではなく、新人やアレルギー外来に配属になった看護師にとっても教育の資材になると考えています。アレルギー疾患の知識を共有する仲の良いチームメンバーが意見交換しながら作った指導ツールを通して、患者さんにセルフケア能力を身につけてもらえることは、私たち看護師のCAIにとっての醍醐味でもあります」

日本大学板橋病院アレルギーセンターYoutubeチャンネル

日本大学医学部附属板橋病院の許可掲載

ライター:嶋 康晃
フォトグラファー:Cosufi

企画勝沼 俊雄先生

保有資格

  • 日本小児科学会認定専門医
  • 日本アレルギー学会認定専門医・指導医

現職

東京慈恵会医科大学
小児科学講座 客員教授

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